H28年補正ものづくり補助金解説(2)

審査の観点について

ものづくり補助金は、従来より審査に基づき採択を決定する競争型の補助金制度です。これは今回の事業でも踏襲されており、審査結果は全て点数化され、点数の上位企業から採択される仕組みとなっています。
審査の観点は以下の4点です。

1)適格性

対象事業の適格性の審査では、補助対象外要件(手引き8頁)の⑦(経費区分での上限金額)、⑧(非対象経費項目の計上等)の形式要件は見落としがちですので注意が必要です。

2)技術面

「新製品・新技術・新サービスの革新的な開発」となっておりますが、実際の審査を担当する外部有識者次第ということで、過去の採択内容を見る限り必ずしも「革新的な開発」でないものも採択されているようです。審査項目で示されている4つの視点をわかりやすく説明して下さい。また、事業類型が革新的サービスの場合は、「3~5年計画で『付加価値額』年率3%及び『経常利益』年率1%の向上を達成する取組み」であることが形式要件となっている必要があります。

3)事業化面

事業実施体制や市場性、収益性等が審査項目となりますが、技術面の審査と同様に、事業化面の審査を担当する外部有識者次第ということですので、示されている審査項目を抜け漏れなく記述することが重要です。
また、小規模事業者については実態に見合った審査が行われることとなっていますので、債務超過等財務面で不利な場合でも採択の可能性はあります。

4)政策面

政策面の審査も手引きに記載されている項目で行われるので、事業化面同様に抜け漏れなく記載する必要があります。特に雇用の支援は、現政権での重要な政策課題ですので、特に記載内容での配慮が必要です。

以上

平成28年補正ものづくり補助金解説(1):増額要件について
平成28年補正ものづくり補助金解説(3):加点項目について

H28年補正ものづくり補助金解説(1)

増額要件について

今回の補助金事業で特徴があるのは、平均賃金のアップによる補助上限額の増額です。
具体的には以下の様になっています。

【2倍増】一般型、小規模型の事業類型の事業者について、雇用の増加または維持を行い、従業員の平均賃金の5%以上の賃上げを実現することを表明することにより補助上限額を2倍にできる。
【1.5倍増】上記の2倍増の要件に加えて、最低賃金グループ(全従業員の下位10%)の平均賃金を10%以上増加することで、更に補助上限額を1.5倍(2倍増と合わせて3倍)にできる。

この増額要件を利用する場合はいくつか注意点があります。

1)増額の取り消し

増額要件は「応募申請要件であり、かつ、実績要件であること(手引き14頁、47頁記載)」となっており、実績で増額要件を満たしていない場合は、「補助金上限額の増額分を取り消し」されてしまいます。

2)実績要件の確認

実績要件の確認期間は、事業終了時点(補助事業実績報告書提出月)の前月から過去6ヶ月間となっています。また要件には、「雇用の増加または維持」も含まれていますので、定年退職者が予定されている場合や自己都合退職者が発生した場合には、新たな雇用も求められています(手引き15頁注6)。(平均賃金の算定にあたっては、退職者や休職者等、新入社員等は除外可能)。

3)事業終了時点と実績対象期間

事業終了時点は補助事業実績報告書の提出月となっていますので、一般的には補助対象期間一杯まで補助事業を行った場合は、2017年7月~12月(小規模型の場合は6月~11月)が実績対象期間となり、基準は前年同期ということとなります。過去の事業経過からすると、交付決定(手引き9頁参照)は、4月ないし5月となりますので、交付決定後すぐに賃上げを行わなければならないということになります。設備購入だけで事業期間が短い場合は、交付決定前に賃上げを実施する必要もありそうです。

4)システム入力と増額のデメリット

賃上げ状況の確認については、全従業員の情報を「インターネット上のシステムに入力いただく必要(手引き15頁、23頁)」となっております。実績報告にあたって賃金台帳の提出等も求められ、確定検査時での確認作業も行われると思われます。従って、本要件を利用した場合は事務負担もそれなりに増えると思います。また、補助金増額額と賃上げによるコストアップ額との関係次第では、必ずしも得ではない状況も想定されます。
(補助金は一時的経費節減、賃上げは継続的費用増)

5)法定最低賃金の遵守

補助事業者には、実績確認期間において法定最低賃金を上回っていることが求められています。万一下回っていた場合は交付決定が取り消され、補助金は1円も受け取ることができません(手引き49頁)。

以上の様なことを考えると、増額要件の申請は慎重に行った方が良いと思います。過去の補助事業では、採択後の事業類型の変更は認められておりませんので、その意味からも申請時に十分な検討が必要です。

以上

平成28年補正ものづくり補助金解説(2)審査の観点について
平成28年補正ものづくり補助金解説(3)加点項目について

H28年二次補正ものづくり補助金の募集開始

2016本日の夕刻、10月に国会を通過した平成28年度補正予算のものづくり補助金(正式名称「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」)の公募が開始されました。

概要は以下の通りです。

募集締切:平成29年1月17日(火)[当日消印有効]
採択目標:平成29年3月中(目標)
補助対象事業:
【事業類型(補助上限額)】下記のそれぞれに「革新的サービス」と「ものづくり技術」があります。
第四次産業革命型(3000万円)一般型(1000万円)
小規模型(500万円):さらに「設備投資のみ」と「試作開発等※」に分かれます。
※小規模型(試作開発等)は、設備投資が必須ではなく、原材料費や外注加工費等の経費が補助対象となります。
【補助率】例年通り2/3以内です。

今回の募集で特徴的なのは、中小企業庁の事前告知にも記載されていましたが、一定の賃上げを行うことで、補助上限額増加(除く第四次産業革命型、連携申請)することです。具体的には以下の通りです。

1)雇用増(維持)+5%の賃上げ=>2倍
2)上記要件+最低賃金の引き上げ=>さらに1.5倍

すなわち要件2)を満たせば、3倍の補助上限額となります。

また大きな変更点としては、27年度補正であった「高度生産性向上型」が廃止となり、「第四次産業革命型」が加わったことです。内容的には、「IoT等を活用する」点に変更はありませんが、「最新モデルを活用した設備投資」は廃止され、「IoT・AI・ロボットを用いた設備投資」となり、対象要件の幅が狭く(IoT+AIまたはIoT+ロボット)なりました。

上記の増額要件と第四次産業革命型等については、次回以降で詳しく解説を行いたいと思います。

平成28年度補正ものづくり補助金解説(1)増額要件

平成28年補正ものづくり補助金解説(2)審査の観点について

H28年補正ものづくり補助金解説(3)加点項目について

以上